コラム「日興リカの人間力」

No.01

研究開発 -新製法の確立-

これまでも、これからも想像力豊かに

群馬工場生産技術部 石井(2006.10.3)

日興リカの研究開発

日興リカには群馬工場と館林工場の2つの工場がありますが、業務内容的には大きく異なります。研究開発関連部門は群馬工場に生産技術部、館林工場には研究技術部と生産技術部があります。館林工場の研究開発部門は、有機化学関係が得意な部門です。そこでの研究は水添反応がメインで、製品は主に液体を取り扱っています。

一方、群馬工場では、化学反応を利用した微粉体の合成から製品化までの一貫した生産を行なっています。製品としては、「スポンジメタル触媒」、「焼結顔料」などの無機粉体、「ナイロンパウダー」、「シリコーンパウダー」などの有機粉体を多種取り扱っているため、粉体に対する知識はおのずと身につきますね。 また、「ゴムワックスコンパウンド」というチューインガムベースの原料として使用されている食品添加物も生産しており、その他の製品も含めると、生産製品群は多種多様です。

私が所属する生産技術部では、群馬工場で生産している製品の主力製品(スポンジメタル触媒、ゴムワックスコンパウンド、ナイロンパウダー、シリコーンパウダー等)の、性能や工程の改善・改良を主に行っています。また新規製品の開発等も手がけているので、意識は常に提案型になりました。そして、ひとつのことだけではなく、幅広い知識が身につくこと、経験ができることは、研究者としての財産だと感じています。

これまでに携わった中での印象的な研究

入社して1年ほど経った頃、新規事業プロジェクトに初めて加わりました。このプロジェクトの目的は、「ニッケル水素2次電池」の正極活物質である水酸化ニッケルの、製法確立から量産化でした。電池用活物質として重要なことは、決められた容積にどれだけ活物質が充填できるか。それが大きなポイントとなります。そのため、水酸化ニッケルに求められる物性は、高密度、高充填ができる球状粒子でした。私は経験が足らず右も左も分からない時期でしたが、精一杯努力をしました。 スタートから3年間で製法を確立。4年後にはパイロットスケール設備の新設をするまでに至りました。プロジェクトのスタート当初は好調だった「ニッケル水素2次電池」の市場は、強敵「リチウムイオン2次電池」が登場したことにより、一転して、価格競争により製造単価の維持が難しくなり、残念ながらプロジェクトは解散となってしまいました。

そうして今から5年前、私は「真球状シリコーンパウダー」の研究開発を担当することになりました。当初この開発では、蛍光灯のカバーに封入する光拡散剤を主用途としたため、粒子径約2μmの微粒子の製法について研究していました。しかし、この分野には大手先行メーカーの存在がありました。私は、水酸化ニッケルで価格競争を体験しただけに、『いかにして安価な製法を実現するか』を第一に考え、検討を進めたのです。 その結果、開始から1年後に、「これ以上簡便な製法はない!」と自負する製法を確立しました。

その後ユーザー評価を経ながらスケールアップテストを実施したのですが、乾燥から製品化までの設備が工場にないことから、マレーシアにある子会社(NFP.I.M)で実施したこともありました。市場の方では、液晶テレビ用のバックライト拡散板の光拡散剤としての採用が決まり始め、将来的な見通しが立ったことから、段階的に本格的な生産設備導入がスタートしました。そして2004年12月には、乾燥~製品化までの新規設備導入を決定。2005年8月にようやく完成しました。 「真球状シリコーンパウダー」も色々な問題がありましたが、昨年夏には全ての量産設備を群馬工場に新設するまでに至り、何十年ぶりの主力製品となりました。 水酸化ニッケル研究の経験では、後発である以上、性能的に優れてるが、安価であるか等の特徴を出さなければならない、ということを学びました。「真球状シリコーンパウダー」は性能的には先行メーカーと同等ではあっても、価格面で評価されたのだと思います。研究開発ではコスト意識を持つこと、それがとても重要であると実感した研究でした。

日興リカの人間力

私は入社以来、上司から言われた仕事(実験に対して、条件等を指示されるなど)以外に、自らの提案を入れた実験を行なうことを心がけています。

その結果として、ひとつ具体的な形となったのが、特殊形状のシリコ-ン粒子です。これは粒子径5μm程度の球状シリコーン粒子表面に、突起物を有する金平糖のような形をした粉体ですが、以前の検討からヒントを得て、独自に検討を続け取り組んだ結果、完成したのだと考えています。 言われたことだけやっているのでは研究は進化しません。自ら提案し行動することで、創造の幅は広がっていきます。日興リカの人間力の強み、それは創造力豊かな研究者が日興リカに揃っていることでしょう。

研究者を目指したきっかけ

小中学校の頃から理科が好きで、特に化学に興味を持っていました。「AにBを加えると物性の全く異なるCという物質になる」という摩訶不思議!な化学反応に心惹かれて・・・。この頃から化学関係の仕事をしたいと思い、研究職を目指すようになりました。